ひよことナンパ

常に例外であれ

ひよことナンパ

『もうこんな辛い思いは絶対にしたくない』

 

『この世界に入れば何か変わるかも』

                        

 

X-2年

 

大学生活を終え、社会人になり、僕は一般的な社会人として生活を送っていた。

 

高校、大学と普通とは少しだけズレた環境で過ごす事になりはしたが、こと恋愛に関しては何も特別な事もなく、付き合い、別れ、遊び、付き合い、別れ。

 

そんな中出来た彼女

 

結果その彼女と3年を過ごして今に至っていた

 

『このまま結婚するのもいいかな』

 

良い意味で一緒に居て安心

 

悪い意味で空気のような存在

 

それこそ、ドキドキなんてしない。

 

 

それでも、3年の月日というのは、今までの関係を壊して再構築するには長すぎて、このまま結婚するというのが当たり前だと思っていた。

 

『僕は社会人になるけど、君が大学を卒業したら、一緒になろう』

 

『うん、わかった』

 

そんな約束をして、仕事に打ち込んだ。

 

この人に幸せな生活を送ってもらうために、今思い出しても本当にそれが一番のモチベーションだった

 

 

                     

 

X-1年

 

『XXX君の事が好き、だから会えない事が耐えられない』

 

『別れてください』

 

一本の電話で切り出された。

 

『きっと僕らは上手くいく』

 

『今まで毎日電話してきたじゃないか』

 

 

 

『ごめんなさい』

 

 

 

 

僕と当時の彼女の間には決定的な壁があった

 

国境の壁という物だ

 

 

振られた事実を受け入れられず、当時の大学の友達に相談した

 

『きっとなんとかなる』

 

『今までだって大喧嘩なんて何度もしてきたじゃないか』

 

そう思って友達にたより

知った事

 

 

既に彼女には新しい彼氏がいたのだ

 

 

今思い出しても本当に恥ずかしいが、彼女に振られた夜、会社の同期の前で初めて泣いた。

 

今でも愛情を込めてそのネタで弄られる

 

その時の同期には本当に感謝している

 

 

ただ、いつからかは分からないが結果として彼女に乗り換えられた事を知った時、

 

泣く事に使った体力、時間、ただただ勿体ないなと思った。

 

_____________________

 

 

『もうこんな辛い思いは絶対にしたくない』

 

『この世界に入れば何か変わるかも』

 

 

あるキッカケがあり、ナンパ師という人達がいる事を知った。

 

この世界に入ればもうあの時のような思いをしなくてもすむかも

 

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X年

 

 

気づけばストリートナンパは生活の一部になっていた

 

ストナンを哲学的に分析する人、理想の女性を追い求める人、ただただ遊びたい人、この界隈に憧れた人

 

色んな人が己の考えを持って、楽しんでいる中で僕も好きな様にやっていた。

 

 

 

幸運な事に地蔵はストリートに出て比較的直ぐに克服する事ができた。

 

それもこれも、参入直後に合流してくれた沢山の人達のおかげだと思う。

 

 

 

 

『さあ、ゲームの始まりだ』

 

そうツイートしてスイッチを入れる。

 

 

最近思うがことストナンにおいては2パターンの人がいると思う

 

【声かけ】という点でスイッチがある人とない人

 

僕はスイッチがあるタイプで、それが出撃ツイートとなっている事が多い。厄介な事にこのスイッチが入らなければ街中でどんな美女がいても声かけを戸惑ってしまう。

 

脱線するが僕は外国語が得意だが、それと似た感じだなと思っていた。海外に行くとまったく問題無く会話ができるのに、日本で突然英語で話しかけられると頭が真っ白になってしまう。

 

『来年の目標はスイッチを必要としない事かなー』

 

そんな事を思いながら、街を歩き始めた。

 

 

 

 

『最近は夕方でも、もう肌寒くなってきましたね』

 

 

僕のお決まりのファーストトーク。ストナンを始めた頃はこの一声かけ目が本当に問題だった。

 

なんて言えば無視されないだろう?

他のナンパと差別化しないと。

直接法?間接法?

女性をよく観察してどこか指摘できる所を探すんだ

 

そんな事を延々と考えて、必死だった。

 

考えに考え抜いた鋭くて面白い声かけが当たり前の様に無視されただけで大抵凹んでた。

 

数日間坊主を繰り返し連れ出しも番ゲも一切出来なかった日が続いた時、なんだか疲れて、でもここで止めるのが怖くて

 

街でぼーっとしていた時、偶然通りかかった女の子に、口を衝いて出た事が天気の話だった。

 

良く『一声かけ目はなんでも良い』という人がいて、僕はそれをふざけるなと思っていた事もあったが、今ではその人にごめんなさいと言いたい。

 

因みに

 

 

夏の昼は『最近本当暑くて嫌になりますよね』

夏の夕方は『この時期だとこの時間でもまだまだ暑いですね』

夏の夜は『今日の昼本当暑かったですよね、夜は快適で良いですね』

 

秋の昼は『この時期になるとやっと涼しくなってきましたね』

秋の夕方は『この時期のこの時間は流石に寒いですね』

秋の夜は『まだ秋だと思ってたんですけど、夜は結構寒いですよね』

 

といった形で1年を通した使用できる凡庸性の高さだ。

 

念の為繰り返すが、僕はこれを初対面道端第一声で言う。

 

 

 

『ナンパで一番難しいのは最初の一声かけ目』

 

地蔵は少なくても、これは僕にとても当てはまった。

 

 

 

『えっ?。。そうですね』

 

『やっぱりそう思います?』

 

『まあ。。。』

 

『朝晩とか薄着じゃ危険なぐらいですよね』

 

『そうですね』

 

『寒いの苦手ですか?僕結構得意な方なんですけどそれでもキツイですよ』

 

『はあ、私も寒いのは苦手です』

 

『じゃあ暑い方が好きなんだ?』

 

『暑いのも嫌いですけど(笑)』

 

『わがままだね(笑)』

 

『そうですね(笑)』

 

 

オープンから会話は繋がった。オープン率だけは高いため特に驚く事もない。

 

続けて自己開示、同じ質問を相手にも降る

 

 

社会人1年目、第一希望に合格し働き始めた事もあり意気揚々としていた。初対面の僕に、当たり前のように就職先の名前を言った。

 

おいおい、危機感ゼロなのか、とも思ったが確かに彼女の勤める会社は誰もが知る企業で、僕の様な一般市民に伝えてもなんの被害もないだろう

 

『とりあえずもっと話を聞きたいからそこのカフェで一杯いこうよ』

 

『えっもう帰るよ』

 

『ここのチーズケーキ美味しいんだよね』

 

『聞けよ笑』

 

『チーズケーキ嫌いなん?』

 

『嫌いじゃないけど、そういう事じゃなくて』

 

『まあまあ、チーズケーキ好きに危ない人はいないってニュースでやってたよ』

 

そんな感じでカフェに入る

 

 

 

毎回思うがなぜこんな流れで女性は付いてくるのか今だに理解できない。これが理解できればもっとナンパが上手くなるきがする、そういう事を皆んなで考える時間も作りたいな、なんて思いながらいつも通りホットチョコレートを注文。

 

そう、僕は甘党だ。

 

彼女はコーヒーを頼んだ。

 

僕はコーヒーが嫌いなので、彼女との今後の会話に一抹の不安がよぎる

 

 

対面の席に座り、少し気合いを入れる

 

改めて見ると目鼻立ちがはっきりしており、身長も高く、可愛いというよりは綺麗な子だった。僕のタイプは小柄で可愛らしい子なので若干気分が落ち込む。

 

 

相手の感情を揺さぶる事で精神的に優位に立てるはずなのに今日は揺さぶられてばかりだ。

 

 

『社会人生活は大変?』

 

『全然、周りの環境はすごく良いし、上司もすごい人が多いんだよ』

 

『本当は他にももっと有名な所も内定もらってたんだけど、そこの人事の人が尊敬できる人で・・・』

 

『人を幸せにできる仕事だから、良いんだよね』

 

そのまま15分ほど彼女の仕事に対するモチベーションの高さ、意識の高さの話を聞いた。

 

凄く楽しそうにそして自信を持って話すその姿はエネルギッシュで、僕が社会人1年目の時はこんなに自信を持っていただろうか?と感じ過去の仕事の失敗を思い出させるほどだった。

 

危うく彼女の眩しさに飲み込まれそうになりながら、軽く深呼吸をして、もう一度考える。

 

『このままじゃ確実に健全解散、しかも連絡先を交換しても繋がらない』

 

 まあそんな事は日常茶飯事だが、そんな事を繰り返しても仕方がない。

 

 

 

PUAは常に例外でなければならない

 

 

 

難しい事が嫌いな僕は常にこのワンフレーズだけを一貫して考えるようにしている。それ以外の情報はキャパオーバーだ。

 

 

 

『XXちゃんは本当仕事に対する意識も高くて、自分の意見もしっかり持ってる、まさに普通の子だね』

 

『普通の子?』

 

『うん、だってそんな子って別に世の中沢山いるでしょ?仕事に一生懸命、私生活に一生懸命、一般的な事だよね』

 

『まあそうだよね』

 

『でもその普通が良い、普通の事を普通にできるって凄いよね』

 

『そうだよね』

 

 『ただ一つだけ普通じゃない事といったら今の状況かな笑』

 

『確かに笑 私いつも夜はナンパとかキャッチが多いからイヤホンして全部無視してるの、この時間とか不意打ちすぎ』

 

『ナンパ?まさか僕の事じゃないよね』

 

『貴方ですよ』

 

『心外だな、雰囲気がタイプの子が歩いてたから声かけただけだけど、あっ、まだ雰囲気だけだからね、喜ぶのは早いよ』

 

『分かってますよ笑』

 

 

 

 

今まで自分の事ばかり話していた彼女が、僕の話を聞いてくれるようになった、僕に対する質問が来るようになった。

こんな事で浮かれちゃいけない、落ち着いて、答えるべき質問には敢えて答えず、どうでも良い質問は必要以上に真面目に。

 

ムキになる彼女、宥める自分

 

 

 

イムリミットかな

 

 

 

 

僕は突然立ち上がり

『楽しかった、今日はありがとう、また今度ゆっくり話したいからご飯でも行かない?』

 

『良いですよ』

 

先ほどのエネルギッシュな彼女の笑顔での返答だった。店に入ってから合計で40分程度。

この後店を移動する事も出来たかも、カラオケで仕切り直しも出来たかも。でも僕はそれらを一切考えず、この場は解散する事にした。

 

 

 

即、準即という言葉があるが僕はそれほど興味が無い。

即でなければ一夜を共に出来ない女性の見極めのみは重要視している。

 

 

今回はどうだったか。まあ準即でオーケイ。そんな軽い気持ちだったか。

否、きっと僕は彼女のオーラ、自信に完全に飲まれていた。

 

会話で自分の世界に引き込む事が出来たのも、何度も使ってきたルーティンがあったからだ。

改めてルーティンの偉大さを実感した。どんなに苦しい場面でも思考停止状態でもそれは自然と口から出てきて、場をコントロールしてくれる。

 

 

メッキが剥がれてきている気がして、今なら無難な形で終え、次回決められると思って

 

アポも同じ、自分にはアポでのルーティンがある程度固まっているから。

 

 

 

 

彼女と別れ、ぐったり。

久しぶりに連れ出しだけでこんなに疲れたな。

今日はもう帰ってゆっくりしようかな。

 

 

 

まあどっちでも良いか

まだスイッチは入った状態だ。

当分オフになりそうにない。

家までゆっくり帰りながら考えよう。

 

良い子がいれば、そう、このオープナーがある

 

 

『最近は夕方でも、もう肌寒くなってきましたね』

 

 

 

 

このブログではそんな僕の日々の葛藤とナンパを通して感じた事を綴っていければと思います。

 

 

 

ーひよこ